|
2人に別れを言ってルジはウルフを従え山林に向かった。 川の上流にたどり着いた、シマネコのことが気になっていたのだ、 (今のままだと、いつかシマネコが人間を襲いそして人間に殺されることのなる、 どちらの死体も見たくない・・・絶対に!)、崖っぷちに立ち、周りを見渡しながら考えていた、 あの2匹を向こう岸に渡すことが出来ないか、すると一本の幹の太い真直ぐ伸びた樹木が目に付いた、 (これなら十分に向こう岸まで届くことが出来る)、そう思うとすぐ実行にかかることにした。 ポケットからパチンコを取り出したそして小石を右手でつまみ (樹木さんゴメンね、君を使わしてもらうよ)、今までよりも念を小石に集中して太い幹に向かって放った、 小石は青白く輝き尾を引きながら幹を貫いた、直径2cmぐらいの貫通した穴が焼き焦げた臭いを発していた、 幹の直径が60cmはありそうだし・・・。 倒れるまで何発も打ち込むことが可愛そうに思えた、 (もっと効率な切斬はないだろうか?・・・・そうだ!)、ルジは手にしていたパチンコをズボンに戻し 一目散に我が家に走り出した、のんびり構えていたウルフもご主人の行動に慌てて走り出した。 我が家から持ち出してきたのは、この世に登場してきた?時のコスチュームセットが入っている 黒焦げた茶色のカバンだった、それを持ち、また樹木に走って戻った。 ウルフにとっては少しきつい運動だった、もともと山林をルジと走るのは好きなのだが 今回だけはそうではなかった、シッポを振っていたのは我が家に向かうときの3分の2までだった。 5分ほど遅れてやっとのおもいで樹木にたどり着いた、 その疲れた足取りにルジは、ウルフを忘れていることに気づいた、 「ゴメン、ゴメン?あれ、かなり疲れているみたいだね」、ウルフの頭をなでた後、 やさしく抱きかかえて樹木から少し離れた柔らかそうな場所を選び、そこにウルフを寝かした。 「心配無いよ、置いて行かないからここで休んでいて」そう声を掛けるとカバンの所へ 戻っていった、振り返るとやはりウルフが不安そうにこちらを見ながら起き上がろうとしていた、 「心配、ないって」と言って寝ているように合図したそれでも頭だけは持ち上げて様子を伺っていたが ルジがカバンを開けるしぐさを確認すると安心したのかこちらを確認できるように方向をすこし変えてそのまま寝転がった。 「どうすれば弾が出るんだろう?」 取り出したのは銃?だった、よく見ると引き金がない、自分も所持していたのであろう品物のはずなのに 扱い方や使った記憶がまったくない。 「これは使えそうに無いな、やっぱりこれでいこう」今度取り出したのは短剣だった。 「あ!」握った瞬間、なんとも言えない懐かしさと熱いものを感じた、体の中からパワーがあふれ出てくる 感覚にすこし臆したのか一度手から離してしまった。もう一度気を集中して握りしめた、 刃の根元から先の順にゆっくり眺めていった、するとまた体の奥から腕 を伝わりエッジに気が集中して透明に近い、あの青白い輝きが見えてきた。しばらくその輝きに見とれていたが ウルフの心配そうな声にふと我に返った、 (遠い過去に覚えがあるようだ、でも今は見とれている場合じゃなかった)。 「よし!」立ち上がったルジは (この刃はどんなものでも通り過ぎる“切れる”ことができる!)そのことだけをイメージしながら 太い樹木に近づき腰を低く構え、右手で握り、柄の底を左手の平で添え、右下から斜め上に向かって一気に振り抜いた 「ハ―スッ!」。 ウルフはビックリして飛び起きてルジの方を見ながら周りをキョロキョロしていた・・・ が、もっとビックリする事がおき始めていることに気づいた、 「キャッ、キャイ〜ン!」ウルフは目の前で、デカイ樹木が隣の木と擦り合わせる大きな音を発しながら ゆっくりと倒れていく様を、脚が固まったまま見送って?いた。 ルジもその場で固まっていた。確かに木を切ることが目的で夢中で振り抜いたのだが、 こんなに抵抗も感じることなく・・・(なぜ?)。 ルジは短剣の刃先を見つめ直していた、 (刃こぼれは・・・ない)あるのは目の前に倒れた樹木とウルフの泣き叫ぶ枯れた声だけだった。 「ゴメン、わかったからもう叫ぶのは・・・やめて(実は僕も叫びたいんだ)」ウルフに近寄りながら なだめようとした、だがウルフの涙目は刃こぼれしていない短剣を見ていた。 「(ありゃ、相当ショックだったみたい)よしよし、もう大丈夫だよ」、短剣が見えないように ズボンとバンドの間に挟み両手を見せながら、 「ほら、もう大丈夫だろ?」、叫び声は収まったが、・・・ウルフの目はまだ疑っていた、 「まあ、仕方ないか」ルジはまた倒れた樹木まで戻った、そして切り口を見て驚いた 「ど、どうして?」、バンドからまた取り出した、驚くのは無理もない、切り口のほうが 刃渡りより20cmほど径がデカイ!(・・・なぜ?)。 切り口と刃先を何度も合わせてみたが納得がいかなかった、しばらくすると後ろから、 その仕草を見てウルフが枯れた声、プラス、シャガレタ声を発し始めた 「ウルフ、さっきより声が・・・キモイ」、詮索は後にして作業を続けることにした。 シマネコが歩きやすいように上側の枝打ちを始めた、すると先程の切り口よりずいぶん細い径なのに 刃が3cm食い込むだけで刺さったまま、引っこ抜きながら(どうして?) 枝が細いから甘くみすぎたようだ、 (よ〜し、これも修行?のつもりで気合を入れてやるか) 余分な力を抜き、ただひたすら切ることをイメージして振ったほうが抵抗も少なく,キレイな切り口になる。 (コツがつかめてきたぞ)、ルジにとってはこういう作業も苦にならず遊びの一部に過ぎなかった。 次は幹を左腕で抱きかかえ右手で一番太い枝を握って一呼吸した後、気合を入れて 「ハースッ!」ひっくり返した、もうウルフは少々のことでは驚くことはなく耳の後ろあたりを 後ろ足でかいていた、そんなウルフを見てルジは(すこし・・・つまんない)。 今度は向こう岸に触れるところのみ枝打ちをした、こうすれば橋渡しにしたとき幹が安定する、 (我ながら、あったまいい〜)と思いながらウルフを横目で見ると、あくびをしていた (すこし・・・腹が立つ)。 「さてと」幹の太いほうに両腕をからませ崖っぷちまで一気に引きずり出した、 問題はこの後どうやって10mもある向こう岸まで・・・ (もう少し小さい木にすればよかった) 確かにそうである、〔筆者曰く〕「過ぎ樽は及ばザル(サル)が如し」、・・・ 〔ルジ〕「なんか言った!」。 〔筆者〕「ゴメンチャイ」。 しばらくの間、近くの岩でウルフともたれながら考え込んでいた、と言ってもウルフに とってはただのヒナタボッコである。ルジの耳元手で大きくゆっくりとあくびを何回も繰り返していた、 (ったく、ウルフは・・・)、そのうち「ギュル〜ッ・・・?」。 「あれ?・・・今の音は?」と言ってウルフの涙で潤んだ瞳と目を合わせた、が、ウルフは 「い、今の、僕じゃないワン」といった顔をしていた、 「・・・ってことは、僕?」・・・「ギュル〜ル〜・・・!」、確かに今のは自分のお腹から発声したが、 2重奏に聞こえた、 「ウルフ、おまえもか・・・」その問いに、ウルフは口笛を吹いて横を向くしぐさに見えたが、 鳴るわけがない・・・か、 「よし、すこし下流に戻って魚でも捕ろう」、立ち上がったルジを見てウルフはシッポを激しく振り 心は燃えていた? いつものようにウルフと協力しながら4匹捕獲した、いずれも40cm強といったところか、 焼き具合を確認しながら、ふと思い出していた、あのキモイ火星人を鷲摑みしていた店主の言葉を・・・ 「ん?」よく見るとウルフの健康そうな 歯形がくっきりと魚に付いている、 (これでは売り物にはならないな)、と思いながら横目でウルフの顔を見ると、 舌からポタポタと唾液を落とし一点に集中して見ていた。 (あの顔も可愛いな〜)と思うのはルジだけかもしれない・・・が、とにかく (売るのであれば歯形無しでない・・・と)。 焼きあがる頃、シマネコたちがようやく現れた、さすがにウルフも焼き魚に集中する余裕はないようだ、 歯茎を見せてふんばっていた、 「もうそろそろ仲良くしろよ、顔なじみじゃないか」、 焼きあがった大きめの魚を2匹選び自分たちの場所から2m半の所に置いた、その行動に うろたえたのはウルフだけではない、シマネコたちも同様だった。 ルジはお構いなしにまた元の場所に座り込み魚をおいしそうに食べ始めた、 ウルフも警戒していたが空腹で食欲を増す香りの攻撃には、いとも簡単に屈してしまった。 (コイツは拷問しなくても食べ物ですべて白状しそう)とルジはニコニコしながら魚を食べ続けた、 残るはシマネコたちのみ、唾液をデロデロ流しながら拷問?に耐えていたが 小さい体のほうが先に近寄ってきてガツガツと食べ始め、大きいほうも慌てるように食べ始めた、 アッという間に平らげてしまった、頭どころか骨も残らない、 (あの口で噛まれたら痛そう)、・・・って痛いで済むかい・・・遺体になるわ〔筆者思う〕。 ルジたちの食べ残した残骸もシマネコたちに渡した、満足はしていない様子だったが食べ終わると その場からすぐ去っていってしまった。 「なんか、お腹が膨れたら眠くなってきたね、ウルフ」、 いつの間にかルジはウルフに持たれかけ眠ってしまった、ウルフは眠ることはなく 周囲に自分の持てるすべての感覚をつかい、最愛の相棒を危険から守ることに徹していた。 「ケイコ・・・、ケイコ、心を無にしてもっと気を集中させるのだ・・・、ウ・・・、 ハ〜スッ!」思わずルジは飛び起きた。それにびっくりしたウルフは頭の中が錯乱状態、 勢いよく立ち上がったのはいいが自分はなにをどうしていいかわからず、 ルジの顔と周囲に目を配りながらひたすらグルグル廻っていた、その慌てぶりを見て (こいつはやっぱり可愛いや♡、)と思い、ウルフの首にギュッとしがみついた。 錯乱状態の中でさらに動きを封じられたウルフはまるで両手で握られたウナギ犬?の様にもがいた。 夢の内容が気になったが 「よーし、残りの仕事は明日にしよう」、もう空には薄っすらと星が見え始めていた、もちろん、 ルジがその気になればハッキリと輝いて見えるが・・・。 翌朝、ポケットにゴム無しのパチンコを3個、ズボンに差し込んでブロンソン家に向かった、 「昨日、ジョンたちに会う約束していたのにすっぽかしちゃったなぁ〜」早足で向かっていた 脚がだんだん遅くなっていた、ブロンソン宅の前まで来たがなんて声を掛ければいいか悩んでいた。 「まだ、来るのが早かったかな・・・」、ウルフはルジの心境をよそにシッポフリフリ状態、 その時、ジョンの元気な声がした 「ルジ〜!」叫びながらドアの前で手を振っていた、その声につられたかのようにリナが勢いよく ドアをジョンごと、こじ開けて出てきた。 「アワワ・・・!」ジョンが転びそうになった、その光景を見て今までの気まずい思いが一気に吹き飛んだ。 「ジョン!リナ!」ルジは無性にうれしくて駆け出していた、もちろんウルフも。 「昨日はゴメンね」 「どうして?とにかく早く中に入って」 「はやく、はやく」2人は両側からルジの腕を抱えてドアの中に引きずり込んだ。 「おはよう、ルジ」中ではジミーとマリアがやさしく向かいいれてくれた、 「あ、おはようございます」勢いで入ってしまったので一瞬、言葉がでなかった、でも ここの心地よい空間がルジをすぐに開放した。 「ルジお姉ちゃんはスゴイね」のっけからルジの話題だった、 「どうして?」、どうもスタイリーの店に飾られているズボンの製作者が自分たちと知り合い ということに2人は自慢しないわけがない。マリアからお店に誘われたがパチンコを取り出して スタイリーさんに渡して欲しいと言い、自分はジゴロさんに 頼まれた用事があるので今日は遠慮すると断った、 (じぃさんゴメンね)。 時間はあっという間に過ぎ、マリアは兄弟を急がせた2人はまだ話し足り無さそう後ろを 振り返りながら学校に向かった、その姿が見えなくなるまで門からルジは見送った。 ジゴロ宅に向かうフリをしてマリアと別れたルジは、金物屋の前で立ち止まっていた、 どうしたらあの樹木を向こう岸へ・・・力任せに渡せるかも・・・でも失敗して谷底に落とすと 何十年も生きてきた樹木に申し訳ないし・・・ブツブツと悩んでいると 「おーい」、金物屋の店主の声がした、 「今日は見ていかないのか?物好きさん?例のナイフを」、 「あ、おはようございます、セイゾ、さん?」、 「おー、覚えていてくれたか、どうしたんだ、考えこんで」声をかけながら商品の整理をしていた、 「う〜ん、ちょっとね(誰にもほんとのこと言えないし)、また見せてもらっていい?」 「ああ、どうぞ御覧あれ」、 「ありがとう、(わー)」懲りずにナイフとにらめっこしているルジを見て店主は 「フッ、ありゃー俺以上だな」と苦笑いをしていた。 にらめっこしながら 「セイゾさん、どうしても重いものを持ち上げたいときは?」、 「ん?・・・ま、そうだな体を鍛えるのが一番だが・・・」、キョトンとした顔で振り向いたルジを見て、 「(ちょっとまずかったカナ)、そいつなんか結構役に立つぞ」、指差した先を見ると丸いものが目にはいった。 「これですか?」丸い物に近づきながら触ってみた、 「ああ、滑車といってここにロープを通して引き上げると、あら不思議、少ない力で持ち上がるって訳」、 それを聴いていたルジの目は輝いた、店主は一瞬にして嫌な予感がした、 「それ、ほしい!」、やはり店主の勘は見事に的中した、 「チョ、ちょっと待て、これは商品だから勘弁してくれ」商品を抑えながら答えた、 滑車と必要なワイヤーの値段を聞いて、あることを思い出した (60cm級の約5匹分で足りるかも)、 「ウルフ、行くよ!セイゾさん、ありがとう」そう告げるなり、その場から走り去ってしまった、 「な、なにがどうしたんだ?」と思うセイゾだった。 いつもの川までたどり着いた、途中で木に絡みつくカズラを2mくらいを引きちぎってきた、 (これを捕った魚のエラに通せば・・・)、さっそく服を脱ぎ川に目をやるとシッポフリフリしながらウルフが 先に入って待っていた、 (アチャー、今日の獲物には歯形を付けるわけにはいかないし・・・でも、あのやる気満々の眼を見ると・・・はぁ〜)。 カズラを持ったままもぐった、水面を見るとウルフの犬掻きが見える (泳ぐの上手になったなー)、水中をさまよいながら獲物を選別していた、 お店用とウルフ協同作業用の2種類である。まずは60cm級の大きいものは水中でエラにカズラを通し 40〜50cmは、一生懸命に水面で犬掻きしているウルフに渡した。 ウルフが陸まで運んでいる間に次の大きい獲物を探してはカズラに通し、 流れの緩やかな川床に石で押さえて協同用を捕まえた、 それを何回か繰り返して目標より1匹多く捕獲できた、それを手にして川から出て来た時、 「どうしてだワン?」の顔に、 「エヘへ・・・(~_~)」と笑うしかない・・・。 協同用はその場で手早く焼き始めた、そして早くシマネコが現れるのを待っていた、 お店用の鮮度が、長くそこに居れば居るほど落ちてしまう。 一番小さいのがだいぶ焼き上がり始めた頃、やっと奴らが現れた、 いままでこんなに遅く感じたことはない、思わず 「遅い!」とシマネコに向かって軽く怒鳴った、シマネコはいつもと違う雰囲気に少し戸惑った様子だった。 最初の小さいのはウルフにご褒美としてあたえ、残りはまだ半焼けだったが全部シマネコにあげた。 そしてお店用を川の浅瀬から引き上げて走り出したが・・・!!慌てていたのか自分が スッポンポンであることに気づき、また慌てて戻った、シマネコたちは勢い良く戻ってくるルジを見て食べている 途中だったが後ずさりした。 「ゴメン、ゴメン、気にせず食べて」と言いながら慌ただしく焼き魚の隣で衣服を着ていたが慌てれば慌てるほど パンツが前後ろ間違えたり、シャツが裏返しだったりで 「もう〜!」と独り言を発しながらドタバタやっているのがシマネコたちは気になって食事どころではなかった。 「おまたー」と少し離れ食べかけの魚を銜えたウルフに声を掛け、シマネコには 「早く食べないと冷めちゃうよ、(半焼けだけど)」そう言って、その場を後にした。 残された?シマネコたちは残りを食べながらルジたちが去っていった林の方を警戒していた・・・ また戻ってこないかと。 魚屋の前までずっと走っていた、もちろんウルフも銜えたまま・・・もう完全に魚は冷めていた、 熱い息と唾液がかかったところ以外は・・・。 走っている途中を見かけた人たちはルジの肩に担いでいる大魚に釘付けだった、 あんな大物は最近ではみないからだ、どんな方法で捕ったのか聞きたかったが、 あまりの足の速さに聞く暇を与えなかった、もちろんこれでも人前では抑えているつもりだった。 「なんとか間に合ったかな?」、お店の前にはまだまだお客さんが品定めをしていた、 「おじさーん、約束したもの持って来たよ」、店主もお客もこちらを振り向いて声を上げた、 その声につられて店の奥から親分が・・・いや、店主の奥さんが現れた。 「おやまー、こりゃまたたまげたネェ、どうしたら・・・、ちょいとあんた、ボーっとしてないで お客のお相手頼むよ、あんたはそれ持って奥へいらっしゃい・・・、あ、あんたは駄目よ、お外で待っていて」 と店に入ろうとしたウルフの前に立ちはだかって 手をかざし注意した。仕方ないのでウルフに人ごみから少しはなれたところで待つように指示した、 それを見ていた奥さんは (なるほど)と感心していた。 「(あれなら、大物を捕ることもウソではなさそうね)お名前は?」 「ルジです、よろしく・・・」、 「グラムよ、よろしく」、身長は低いが太っ腹の親分って感じ 「よろしくおねがいします、グラムさん」、 「俺はフィッスっていうんだ」、 「あんた、お客の相手はー」、 「いやー、こんな大物、どうやってと思って・・・」、 「火星人を捕まえるよりはずっと楽だよ」、 「火星人?・・・ワッハハハハー!面白い事いう子だねぇ」とグラムは豪快に笑い飛ばした、 横に立って捕獲方法を聞きたがっているご主人に向かって 「早く、お客の相手をしな」と言って店先に追い払った。 「どうせ、いらぬ詮索をして釣り仲間に自慢しようって魂胆だ、ルジは気にしなくていいよ、 あんたは信用出来そうだ、それに捕獲方法なんて言ってみれば・・・企業秘密みたいなものだし・・・ッテネ」 と言いながら、人差し指で鼻を軽くつついた、 ちょっと魚の匂いがした。 「見事な魚だ、値段はこれでいいかい?」、 「うん」、 「ずいぶん即答だね」、 「だってわからないから、グラムさんの値でいいよ」、ニコニコしながらルジは答えた。 「ふ〜、根が正直だと逆にやりにくいね〜・・・いいや、これで」、 「ほんとに?ありがとう」、 「いいよ、また頼むよ」と言って肩を叩いた、また魚の匂いがした、 「ちょっとあんたー、これ並べとくれー」、 「あいよ」魚を2匹ずつ店前に並べていた、店主はお客の相手をしながらも既に6匹分の 場所を確保していた、並べ始めると同時に店には活気あふれる声がしてきた、 代金を受け取って店を出る頃には2匹目の行き先が決まり、さばき始めていた、 「じゃ、またな」作業しながら店主が言った、 「うん、また」そう答えるとその場を後にして金物屋に向かった。 店に着いたが店主の姿が見えない、仕方ないのでまた例のナイフを覗き込んでいた、 「おー、ルジまたお前か」奥の部屋から鎖をジャラジャラさせながら店主が出てきた、 「こんにちは、鎖ですか?」、 「あー、ただしアルミ製だが、こんなもん何に使うのか・・・しかもスタイリーが」、 「あ、アクセサリーっていうのに使うんじゃない」、 口をヘノ字にしてから 「あ・くせ・りー、なんじゃそりゃ」、 「触らせてもらってもいい?」、 「ああ」と言うと鎖の束をヒョイとルジに渡した、 「ワー・・・、軽い」、思わず受け取った手が上に持ち上がった、 「ほんとに軽い」、 「当たり前だ、アルミだからな、でも日常では弱すぎて使い物にならない」と太い首を揺らしながら答えた。 「でも錆びないんでしょ?」 「まーな、でも金物屋としてはあまりこの辺では売れねぇ、で、今回は何をねだりに来たんだ」 と言いながら上から覗き込んできた、 「これが欲しくて・・・はい」滑車を指差し、ポケットからお金を出した、 「今日はチャンとしたお客だよ」。 「おっ、どうしたんだ、この金?大丈夫か?」すこし眉間にシワをよせ疑うような目で話した、 「大丈夫、心配ならグラムさんに聞いてもらっていいよ」、 「グラムさんって、魚屋のカミさんかい?」、 「うん、そうだよ」、 「あの人はうちのお得意さんだ・・・が」眉間のシワは消えて眉毛がすこしハの字になった、 「でも、どうしてかは・・・企業、ひ・み・つ」と言いながら人差し指を立てチッチのポーズを笑ってみせた。 (とにかく、変わった奴だな、こいつ・・・)、滑車の並べている前まで行って 「それじゃ、どのサイズにするかね?」、滑車には大小の色々な種類があった、 「(う〜ん、困ったな〜)、直径50cmくらいの大木を引き上げたいんですけど・・・」、 耳に手を当てたセイゾが 「・・・だれが?」、 「あ〜、1人じゃむりだよね〜・・・」、 「そりゃ無理だ」、 「ウルフとやっても・・・」、 「無理だ」即答だった。 「ジゴロさんに頼んでも・・・」、 「お前、じぃさんになにをさせるつもりだ」、 「あ〜、(こまったな〜・・・そうだ!)企業秘密ってことで・・・だめ?」 「おまえな〜・・・ハァ〜、まあいい、ロープはこれでいいと思うが・・・」仕方がなさそうに説明しはじめた、 「このロープ太さでこの滑車になるがロープの長さは?」、 「(う〜ん、川幅10mだから)・・・30mくらいかな〜」すこし時間を掛けて答えた、 「な、ルジ、一体なにをやらかすんだ?」、 「だから、企業秘密だって」、 「こっちとしても、売るからには責任があるじゃないか・・・ (これを使ってまた大蛇でも捕獲するつもりか?・・・ま、まさか!)」青ざめた顔して、 「お、おい、なにか悩み事でもあって、く、首吊りにでも使うんじゃないだろうな」、 「まさか、確かに悩んでいることはあるけど・・・それならもっと細いロープだけで木の枝に 縛り付ければいいんじゃない?」、 「そりゃそうだけど・・・」、ルジから受け取ったお金を数えながら 「ロープ分の代金が少し足りないぞ」、 「企業秘密ってことで」、 「馬鹿いうな、商売にならねえよ」、 「企業秘密っていうのを教えてくれりゃーマケテやってもいいが、どうだ?」、 「教えたら秘密にならないでしょ!」 「ま、そうだな」、頭をかきながら 「ちょっと待っていろ、いいのがある」と言って店の裏に向かい、5分ほどして戻ってきた、 手には少し汚れたロープを持っていた 「これなら、代金はいらない、どうせ置いてても売り物にはならないからな」、その言葉に 「セイゾさん、ありがとう!」と言いながらセイゾのゴツイ腰に絡みついた。 「おいおい、今どき自分の娘でも抱きついてくれないぜ」とすこし照れていた、 「これ、奥さんには企業秘密?」の問いに、 「女房がこわくて・・・って企業秘密だ」真面目に答えた、 「とにかく、これだけあればいいんだな?」、 「うん」笑顔で答えるルジに、セイゾはまだ不安だった、 「う〜ん、たとえば飛び降りるのが怖いからといって、崖っぷちの高い木の枝に滑車を取りつけてだな、 重い岩にロープにくくりつけて岩を落として首吊るなんてことは、ないよな」、その言葉を聞いてルジの目はまた輝いた 「それ、使える!ありがとうセイゾさん!」と言って店を飛び出していった、 「ちょ、ちょっとルジ!はやまるなー、ルジー!」、 「うるさいよ〜!!あんた〜」、店の外で、人通りがあるというのに、あのゴツイ顔から涙と鼻水をたらして、 セイゾは犬の遠吠えのように叫んでいた 「ル〜ジ〜」、もう店の前にはルジの姿はなく、セイゾのセツナイ声が響くだけだった。 山林の中でロープを持って走るのには苦労した、上流にたどり着いたのは夕方に近かった、 すこしお腹が空いてきたが時間がないので作業に取り掛かった、向こう岸にも立派な樹木がそびえていた、 「よし、滑車はあれに取り付けよう」。 樹木を引くときの抵抗を少なくするため下にいくつかの丸太をひくことにした、丸太は切った太い枝ですぐ出来た、 後は気合をいれて樹木の幹を持ち上げた、 (この姿をジョンたち見られでもしたら・・・)。 「ウルフ、丸太を幹の下に入れて・・・はやく〜」、ウルフは赤顔になったルジの顔を見てはシッポを振るだけだった、 目線と顔のあらゆる筋肉を使いジェスチャーを繰り返した、ぷるぷる震える脚もジェスチャーに付き合わせた・・・ 「う・る・ふ〜!!」、(この丸太をこの下に・・・持ってくるの・・・あ、足が届いた!) 足で捉えた丸太を慎重に手繰り寄せてきた、その時である、心が通じ合ったのかウルフがいきなり走り寄ってきた、 「やっとわかってくれたの?」、ウルフの右前足がその丸太をガシッと力強く押さえつけた、 「そうだ!」、そして後ろに引っかいた、「!!」、そして右後ろ足で勢い良く蹴った・・・。 5mくらいまで丸太は転がってしまった・・・、 「ぶ・る・ぶ〜!!」、手から樹木が離れた、ドスン!ドテ、その後尻餅も搗いた、 ウルフはシッポを振りフリ、キュートな瞳でこっちを見たがルジの鋭い目つきに気づいたのか5歩後ろに下がった。 「もう、だめだ〜」ルジはそのまま後ろに倒れこみ大の字になった・・・。 しばらくして、自分が寝ていたことに気づいた、 「しまった!」、ガバッと飛び起き太陽の位置を確認した、(無い?)夕暮れでした。 「アオ〜!」。 次回のタイトル、 シマネコ(逝かないで!) |
| << 前記事(2008/12/23) | トップへ | 後記事(2008/12/23)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|
| << 前記事(2008/12/23) | トップへ | 後記事(2008/12/23)>> |